キリスト教徒のユダヤ迫害について調べた。
狂気のナチスだけじゃない。
なんとヨーロッパ全体で迫害があった!
●迫害の歴史
4世紀 東ローマ帝国
コンスタンティノス帝の改宗で、権力と結びついたキリスト教。
皇帝は弱体化したユダヤの宗教活動、商業活動を制限する法律を作った。
- キリスト教徒との婚姻禁止
- 公職禁止
- シナゴークの建設禁止
- 儀式の日にちを交付する権限を剥奪
→ ラビをおとしめ、教徒たちの結束を妨害した - キリスト教奴隷の所有を禁止
→ 農業ができなくなった!大きな土地を所有するユダヤ人を直撃し、以降、街の住人になった
神学者アウグスティヌス(354~430)が「ユダヤは屈辱的な貧困と、社会的排斥を受けながら生きながらえる事が罰」と唱えた。
教皇グレゴリウス1世(在位590~604)がこれを公認する。
グレゴリウス1世(>ウィキペディア)
http://pro.corbis.com/popup/Enlargement.aspx?mediauids={5316c2a1-24ae-4673-b8db-12b8fffcd6e0} パブリックドメイン –
真綿で締めるリベンジが始まった。
11世紀 十字軍遠征が始まる
十字軍でユダヤの生活が一変する。
大量虐殺されたり、改宗を強制されたのだ。
真綿が鉄槌に変わった!
なんで?と思うだろう。
そもそも十字軍は「キリストの聖地をイスラムから取り戻す」ためだ。
ターゲットはイスラム教徒。
なぜユダヤ人が襲われるのか?
答えは
- 遠隔のイスラム教徒と違い、身近にいたから
- 同じく非キリスト教徒だから
- 弱い物いじめ
- もともとユダヤ人は嫌われ、憎まれていたなど
こじつけっぽいが、本音はいじめたかった!のだろう。
第1回十字軍の最初の犠牲者は、ライン地方のユダヤ人だった。
大量虐殺か、強制改宗か。
どちらも逃れるため、多くの一家心中や集団自殺があったそうだ。
StudiolarsenによるPixabayからの画像
12~15世紀 悪魔集団という迷信
庶民に反ユダヤが定着していった。
文字が読めない迷信深い農民は、不思議な習慣と奇妙な宗教儀式を行うユダヤ人が
・黒魔術を操る異様な集団
・悪魔の手先
に見えたのだ。
根底にあるのは恐怖心‼️
うわさが捏造される。
「ユダヤの過越祭の儀式に使うため、非ユダヤの子供を毎年殺すのだ!」
迷信が信じられる時代だった。
キリスト信者の少年が殺されると、無実のユダヤ人が容疑者にされる。
噂は噂を呼び、「過越祭のマッツォー(パン)はキリスト教徒の子供の血を使ってる」が信じられた。
ユダヤ人一家や、ユダヤ人社会全体が虐殺された。
イギリス 、フランス、オーストリア、スペイン、ドイツ、イタリア…
ヨーロッパ全体で。
12~13世紀 キリスト教の教会会議
キリスト教界トップの締め付けが厳しくなった。
1179年 第3回 教会会議(ラテラノ公会議)で、ユダヤ規則の法令が制定された。
- キリスト教徒とユダヤ教徒の居住地の隔離
- ユダヤはキリスト教徒の召使・使用人を雇うこと禁止
- キリスト教徒間で、金銭の貸し借りに金利を取るのを禁止
→ 卑しい金貸し業はユダヤに押しつけられた
1215年 第4回 教会会議(ラテラノ公会議)で、さらなる隔離が加わった。
- 「恥ずべき存在」としてユダヤ人を示すバッジを着けさせた
- 公職に就くこと禁止
- イースターやその他神聖な休日に、ユダヤ人は表に出ること禁止
ナチスが行った、黄色い星のバッジやゲットーはここから始まった。
Kitkatcrazy at en.wikipedia / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)
13~15世紀 ヨーロッパからの追放
1350年前後、ヨーロッパでペストが流行った。
人口の1/3以上が失われた感染症に、人々はパニックになった。
「ユダヤ人が井戸に毒を入れた!」
「ユダヤ人が井戸を汚染し、ペストを広めた!!」
迷信と集団ヒステリーのため、ユダヤ教徒は生き埋めにされたり、財産を没収された。
とうとうユダヤ人を追放する国があらわれた。
イギリス 、フランス、ドイツ、スペインなど
20世紀 ナチス ホロコースト
最も過酷なナチスの迫害。
よく知られているので省略。
●なぜ起きたか?
人類史上、最も過酷な迫害はなぜ起きたか?
ポイントは3つある。
① 罪を明記した書物があった
ユダヤ人の罪、キリスト殺害についてヨハネ福音書(キリストの伝記)に罪人は『一部のユダヤ人ではなく、未来永劫、全ユダヤ人!』と書かれている。
キリスト教と福音書は普及し、虐殺の許可証と考えられたのだろう。
② 権力と結びついた
コーマ帝国と結びつき、影響力は一気に増大した。
ヨーロッパ全体に、キリスト教原理が浸透する。
法令が作られ、あらゆる社会生活が規定されていった。
③ 庶民の迷信
自分たちが知らないことで感じる恐怖。
怖いから恐れる。
恐れるから排除したい!
特に事件や感染症の際は、この感情が過激だった。
残念なことに、今も差別がある。
- 人種差別
- 宗教差別
- 国家間の反感
- 集団のハラスメント
- 個人の好き嫌い…
歴史を学び、少しでも差別を減らしたいものだ!
〜次回「差別しない/させない方法」に続く
<参考>
・ヒストリーチャンネル「イエス・キリストの生涯」
https://jp.history.com/pgm/29220/
・海外テレビドラマ「ザ・ローマ 帝国の興亡」https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA000084RQD
・早稲田エクステンション2014春「ユダヤ人問題」講座より
・レイモンド・P・シェインドリン著
「ユダヤ人の歴史」