好きなことを追いかけ、流れるまま陶芸家になった久佳さんです。
●伊藤久佳さん、50代、子供2人、陶芸家(夫)の手伝い⇒陶芸家として独立
好きな言葉; 媚びない。群れない。属さない。 そして、やめない。あきらめない。
——–目 次—————————-
【初回】1. 旅とメキシコ
【初回】2. 守るものができた
【第2回】3. 陶芸家の妻
【第2回】4. 夫が倒れた!
【第3回】5. 新しい生活
※ 以下、次回に続きます
6. 創るということ
7. プラスマイナス0
8. 子供へのメッセージ
9. 久佳さんの強み
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5. 新しい生活
夫はリハビリセンターに転院し、『高次脳機能障害』と診断された。
脳が機能しない障害だ。
・今朝何を食べたか、覚えられない(短期記憶障害)
・明日検査だから準備する、など段取りが欠如(遂行機能障害)
治ったら、また個展をやって………が遠ざかってく
入所時に言われた言葉がよみがえる。
「障害は治りません。リハビリセンターは障害を抱えて生きていくため、家族や本人に慣れてもらうための場所です」
理解しようと書物を読み漁る。
障害受容の心理学者の本にあった『希望を放棄することから関係を再構築する』という言葉がピンと来た。
気に入った!
よし、陶芸家の妻を諦めよう!と決意した。
障害を抱えた夫との生活が始まる。
病院でできた仲間と家族会も立ち上げた。
●外から見たら普通の人だが、仕事はできない
●体の障害と違い、脳の障害はわかりにくく生活支援もまだ確立されていない
家族会で悩みや課題を分かち合った。
最も難しいのは、本人に障害を持ってるという自覚がない事だ。
わからない事がわからない、忘れる事を忘れる。
如何ともしがたい。
男のプライドもある。
今まで優位に立ってきた妻から指示されると腹が立つらしい。
「なぜお前に言われなあかんねん!」
一つ一つは記憶できなくても、漠然と怒りが蓄積される。
とうとう、溢れ出た。
ある日、久佳さんの不在中にクロゼットの服をごっそり持ち出し、庭で火をつけた。
●事件をたまたま目にして、娘や孫に危険を感じた久佳さんの実母
●特別扱いをしないことで、元に戻る奇跡を信じたい義両親
●諦めることで再構築したい久佳さん
三つ巴の話し合いが始まった。
激流がぶつかる。
溢れ出た水は新しい流れを作り、久佳さん達は身を任せた。
家族再構築は、まさかの夫抜きの展開となった。